2013年5月30日木曜日

聞く?聴く?利く?

日本酒の良し悪しを官能鑑定することを「酒をきく」とか「きき酒」といいます。
正式には、まず目で見てから静かに香りを嗅ぎ、それからごく少量を口に含んで味を吟味してそれらの結果から酒の出来具合を総合的に判断します。
したがってきき酒という行為の本来意味からすると、「見る」「嗅ぐ」「味わう」と言った動詞が当てられてよさそうなものですが、なぜか「きく」というのです。

ちなみに通常国語辞典では「きき酒」の漢字表記として「聞(き)酒」または「利(き)酒」が用いられており、一般的によく使われる「唎く」という字は漢和辞典にも載っていない当て字なのです。

日本語の「きく」という言葉には多くの意味があるようで、この音を持つ漢字も「聞く」「聴く」「効く」などいろいろあります。
これらの漢字のうち「聞く」は、もともとは声や音に反応する耳の感覚を表す文字ですが、お香をたいて楽しむ香道などのように「においを嗅ぐ」という意味も持っているようです。

『広辞苑』によると、「聞く・聴く」には「(「利く」とも書く)物事をためし調べる」という意味もあり、その語義を細分すると
①嗅ぎ試みること、
②味わい試みること
などの分けられます。

嗅ぎ試みることも味わい試みることも、いずれも「きき酒」の意味に通じていることから、「酒をきく」の「きく」は「聞く」から来たのではないかという説があります。
ただ、「酒を聞く」と書いたのではいかにも耳の感覚のようでしっくりとしません。

一方、「利く」には「目が利く」とか「鼻が利く」といった言い回しがあります。

そこで「利」に口偏をつけて、「口で以てきく」という当て字ができたのではないかと考えられているのです。


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