2014年2月11日火曜日

とうがらしでつくる発酵食品

新潟県妙高市新井地区には、『かんずり』という珍しい発酵トウガラシがあります。

秋に収穫した辛くて真っ赤なトウガラシを、厳しい寒さの冬に真っ白い雪の上にそれをちらして身を締める。これが新井地区の冬の風物詩となっています。
雪の上でしっかりと味がしまったトウガラシは、次に搗かれ、そこに米麹、塩、柚子が加えられじっくりと3年間発酵と熟成をさせられます。

日本のトウガラシである「鷹の爪」や「虎の尾」は本来非常に辛みが強いものでありますが、このように米麹で発酵させると、出来上がったものは刺すような辛みが抜けて丸みを帯びた辛さとなり大変マイルドなものとなるのです。その上、風味も一段と高まり、風格のある発酵トウガラシになるのです。

お漬物の上にかけたり、鍋料理に使ったり、味噌汁に入れたりと様々な料理に使われるものにと変身を遂げるのです。

発酵することにより、大変に神秘的な味や香りが加わり、そして保存も可能となります。発酵の底力を利用した『かんずり』。

日本中探しても『かんずり』のようにトウガラシそのもの発酵させ、風味付けしたものは他に例がありません。

東南アジアに行くと発酵トウガラシはありますが、『かんずり』のように日本古来の米麹を使い発酵させたものではありません。

『かんずり』は、まさに世界に誇る日本人の発想でと言えるでしょう。

(参考文献 小泉教授が選ぶ「食の世界遺産」日本編)

2014年2月10日月曜日

吟醸酒の誕生

皆さんもよくご存知の吟醸酒。
それまでの伝統的なお酒と全く異なったタイプの吟醸酒が登場したのは、大正時代の末ごろのことです。

それから短期間のうちに全国の酒蔵でこぞって造られるようになったのですが、その背景には2つの大きな要因がありました。
1つは、原料米を搗く(つく)精米機の改良です。
江戸時代後期に灘(兵庫県)で始められて以来、造り酒屋での精米は河川の水力を利用する水車精米に頼っていましたが、大正時代の末頃には電力による横型精米機に切り換えられていきました。
これが原料米の高い精白度が要求される吟醸酒づくりのきっかけになったのです。
ただ、横型精米機は水車精米に比べれば精米の効率を格段に高めたのですが、米と米をすり合わせる方式だったため精米歩合80%以上に精白するのは至難の業だったと言われています。

しかし昭和に入ってまもなく新型の竪型精米機が登場し、酒造りの技術革新は新たな段階に進むことになりました。竪型精米機とは、金剛ロールと呼ばれる研削砥石が回転しながら米の表層部分から順次削り取っていく仕組みの精米機で、精米方法の原理的転換を実現した画期的精米機でした。
もう1つの要因は、明治40年10月から隔年で開催された「全国清酒品評会」と、44年から現在まで毎年開催されている「全国新酒鑑評会」です。
これらの品評会や鑑評会で入賞するために全国の酒蔵はやっきになりました。
杜氏は原料米の品種を選んで米の精白度を高め、酒造法に工夫を凝らすなど、その時代の技術を駆使して競い合ったのです。
吟醸酒は、この品評会用の酒造りから生まれたお酒なのです。

ただ、当時の吟醸酒づくりではあくまで品評会で賞を取るための酒造りであり、また、味も香りもそれまでの日本酒とは全く異なったものであったため、市場に出回ることはほとんどなかったようです。

現在醸し出される綺麗で美味しい日本酒は、こういった技術革新や蔵人さんたちの大きな努力によって出来上がるようになったのです。

しぼりたての吟醸酒を楽しみたい方はこちら
(参考文献 日本酒百味百題)