2011年10月6日木曜日

肝心要の麹(こうじ)

「一に麹(こうじ)、二に酉(もと)、三に造り(醪仕込み)」といわれる酒造り。日本酒は、お米を発酵させて造られる醸造酒です。米を麹菌の酵素によって糖分に変え、そこに酵母を加えて発酵させるという、世界でもまれに見る、きわめて精巧で、複雑な仕組みによって造られています。
酒造りでは、蒸した米に麹菌(こうじきん)を混ぜて麹を作る工程を製麹(せいぎく)と呼びます。『麹』という漢字の中に、『菊』みたいな文字があるからだとか、蒸米に増殖した麹菌を顕微鏡で見ると菊の花みたいだからだとか諸説あるようです。
蒸した米の熱を取った後、麹室(こうじむろ)と呼ばれる特別の部屋で蒸米に種麹(たねこうじ)をふり、麹菌を植えつけ、繁殖させます。この部屋は麹室(こうじむろ)と呼ばれ麹菌が発育しやすいようにだいたい三〇度くらいに室温が設定されています。
以前、酒造り体験をしたことがあるのですが、早朝からの作業で眠かったせいか、とても暖かい麹室の中で、少しうとうとと気持ちよくなってしまったことを思い出します。麹室による麹菌の繁殖により、デンプンをブドウ糖にする糖化酵素や、タンパク質をアミノ酸にするタンパク分解酵素などのいろいろな酵素を分泌し、酵母がアルコール発酵や香りの成分を生成するための材料づくりの役割を果たします。
「一麹(こうじ)、二酉(もと)、三造り(醪仕込み)」、昔から酒造りの上で最も重要、かつ難しい工程として、麹造りが第一に重視されてきました。これは、麹の出来具合によって酒の品質が大きく左右されるからです。テレビや雑誌などで見かけたこともあるかと思いますが、麹菌を蒸米にふりかける作業は、まさに緊張の一瞬で、時間が止まって感じられるほど息を飲む瞬間なのです。

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